民法

「相続で損をしないために!特別受益の具体的な配分方法と注意点を司法書士が徹底解説」

相続における「特別受益」とは?まずは基本を確認!

相続の場面で「特別受益」という言葉を耳にすることがあります。これは、相続人の中でも、被相続人(亡くなった人)から生前に「特別に利益を受けた者」がいる場合に用いられる概念です。

代表的な例としては、以下のようなものがあります。

  • 生前に結婚資金として1000万円もらった長男
  • 自宅の購入資金として援助を受けた次男
  • 学費をすべて負担してもらった長女

このように、相続人の一部が特別に援助を受けていた場合、他の相続人と同じ割合で相続させると不公平が生じます。その不公平を是正するためにあるのが「特別受益」の制度です。

特別受益があると、遺産はどう配分される?

民法903条では、特別受益がある場合、相続分を次のように計算します。

法定相続分 ×(遺産総額 + 特別受益額)

つまり、単純な法定相続分ではなく、「特別受益を加えた総体に対して各自の取り分を割り当てる」という考え方になります。

具体例で計算してみましょう

【ケース】

  • 被相続人の遺産:3000万円
  • 相続人:長男と長女(法定相続分は1/2ずつ)
  • 長男が生前に結婚資金として1000万円を受け取っていた

【計算方法】

  1. みなし相続財産(遺産+特別受益)= 3000万円+1000万円=4000万円
  2. 各人の相続分(法定相続分)=4000万円×1/2=2000万円
  3. 長男はすでに1000万円を受けているので、残りの1000万円を相続
  4. 長女は2000万円を相続

このように、特別受益を受けた相続人はその分が差し引かれます。

特別受益の対象になる財産とは?

すべての贈与が「特別受益」になるわけではありません。以下の3つが代表的な対象です。

  1. 婚姻・養子縁組のための贈与
  2. 生計の資本としての贈与(住宅取得資金など)
  3. 遺贈(遺言による贈与)

これらに当たると判断されれば、原則として特別受益にカウントされます。ただし、被相続人が「特別受益にしない」と意思表示をしていれば別です(民法903条但書)。

特別受益の主張は誰がどうやってする?

通常、他の相続人が「○○は特別受益を受けていたはずだ」と主張します。ただし、これが争いの種になることもあります。

証拠が重要!

  • 通帳の振込記録
  • 贈与契約書や贈与税の申告書
  • 会話の録音やLINEのやりとり

主張する側がこれらの証拠をそろえておくと、協議や家庭裁判所の調停でも有利に働きます。

誤解されやすい「特別受益」との違いに注意!

1. 生活費の仕送りは対象外?

通常の仕送りは「生計の資本」とはされないため、特別受益には該当しません。例えば、大学の学費や家賃補助など「生活費」の範囲にとどまるものは対象外となる傾向があります。

2. 少額の贈与もカウントされる?

原則的には「通常の扶養義務の範囲内」や「社会通念上相当な金額」であれば、特別受益とはされません。たとえば10万円の誕生日プレゼントなどは該当しないでしょう。

司法書士試験で問われる特別受益のポイント

司法書士試験では、以下のようなポイントがよく問われます。

  • 民法903条の法的構造
  • 特別受益の意思表示の有無による法的効果
  • 特別受益がある場合の遺産総額の計算方法
  • 家庭裁判所の審判手続きとの関係

特に、遺産分割協議書の作成時に「誰が何をどれだけ受け取るか」が論点になるため、具体的な計算問題も出題されやすいです。

実務で気をつけたい!トラブルを避けるコツ

1. 遺言で明確にする

「長男に贈与した資金は特別受益とみなさない」と遺言で記載することで、後のトラブルを防げます。

2. 相続人全員での共有認識

あらかじめ「この贈与は特別受益になるかもね」と共有しておくことで、話し合いがスムーズになります。

3. 家庭裁判所の調停利用も視野に

相続人間で解決が難しい場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることも重要です。司法書士としては、申立書の作成などで支援できます。

FAQ:よくある質問

Q1. 生前贈与はすべて特別受益ですか?
→いいえ。生活費や趣味的な贈与など、社会通念上相当と判断されるものは該当しません。

Q2. 特別受益があると相続放棄になる?
→なりません。特別受益は「相続分の調整」であり、「相続する・しない」の問題とは別です。

Q3. 証拠がなくても主張できますか?
→可能ですが、証拠がないと調停や審判で不利になる可能性が高いため、可能な限り証拠を揃えるべきです。

まとめ:公平な相続のために「特別受益」の理解を深めよう

特別受益は、相続における公平性を確保するための重要な制度です。一見複雑に見えますが、「誰がどれだけ得をしていたのか」を数字で示すルールとも言えます。相続人同士のトラブルを防ぎ、円滑な遺産分割を実現するためにも、特別受益の知識は欠かせません。

司法書士試験を目指す方は、法的根拠だけでなく具体的事例とその計算方法まで押さえることが合格への近道となるでしょう。

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