「相続税が高すぎる…」
そんな悩みから、「養子縁組をして節税できるって本当?」という話を聞いたことがある方も多いはず。
実は、養子縁組は節税効果があるとされています。ただし、法律に触れる「脱法的」な養子縁組は無効になる可能性もあり、慎重な判断が求められます。
本記事では、節税目的の養子縁組について、相続税法・民法の観点から解説し、司法書士試験で狙われる論点を整理します。
養子縁組と相続税の関係
なぜ節税になるのか?
相続税の基礎控除額は以下のように決まります:
基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
つまり、法定相続人が増えると、相続税の課税対象額が減るという仕組み。
そして、養子縁組によって法定相続人の数を増やせば、相続税を抑えられる、というわけです。
養子は何人でもOK?制限はある?
税務上、養子の数には制限があります。
- 実子がいる場合:1人まで
- 実子がいない場合:2人まで
これを超えた養子については、相続税計算上の法定相続人にはカウントされません。
ただし、民法上の相続権には制限はないため、遺産分割などの場面では通常の相続人として扱われます。
「節税目的のみの養子縁組」は無効?
司法書士試験でも問われる重要判例:最判平成2年7月5日
この判例は、節税目的だけで養子縁組をしても、他に問題がなければ有効と判断しました。
「節税の目的でされた養子縁組であっても、それが公序良俗に反しない限り、有効である。」
つまり、
- 「節税目的」=ただちに無効ではない
- ただし「全く交流がなく、形式的なだけの縁組」は無効とされる可能性もある
節税目的の養子縁組で注意すべき点
- 養子との実体的な関係があるか?
→日常的な交流や扶養関係があると、有効性が高く評価されます。 - 相続人間のトラブルリスク
→突然の養子縁組で、他の相続人が納得しないケースも多いです。 - 遺留分の計算に注意
→養子にも遺留分権利が生じるため、分割協議がこじれることがあります。
司法書士試験で問われる論点まとめ
出題されやすいポイント
- 養子縁組の法律行為としての有効性(民法802条)
- 公序良俗(民法90条)との関係
- 税務上の相続人の制限とその影響
- 判例の結論と理由付け(特に最判平成2年7月5日)
択一対策の例題
Q. 相続税の節税目的でなされた養子縁組は、常に無効である。〇か×か。
→ 答え:×
(公序良俗に反しない限り、有効とするのが最高裁の立場)
よくある質問(FAQ)
Q1. 養子にすれば誰でも相続税の節税になるの?
→ 原則、1人(実子なしなら2人)までです。それ以上は税務上カウントされません。
Q2. 親戚ではなく、全く関係ない人を養子にしてもいいの?
→ 民法上は可能ですが、実態がなく形式的な場合、無効になる可能性があります。
Q3. 実際に節税効果があった事例は?
→ たとえば、子ども1人しかいない家庭が、孫を養子にして相続人を2人に増やし、相続税の基礎控除を拡大したケースなどがよくあります。
節税のための養子縁組:実際に行うときのポイント
- 実態のある家族関係を築くこと
- 税理士・司法書士など専門家に相談すること
- 他の相続人への配慮を忘れないこと
単なる税金逃れと見なされないよう、「家族としての実質」がとても重要です。
まとめ:節税と養子縁組、司法書士試験でも実務でも必須の知識
節税目的の養子縁組は、確かに有効な手段のひとつです。しかし、その有効性には法律上の要件や判例に基づく判断が必要です。
司法書士試験では、
- 民法上の有効要件
- 公序良俗違反の有無
- 税務上の取り扱い
など、多面的な視点で出題されます。条文の暗記だけでなく、判例の理解や事例の分析を通じて、「使える知識」として整理しておくことが合格への近道です。