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【京都府学連事件とは】肖像権と憲法13条の関係を最高裁判決から読み解く

「肖像権って、憲法で守られているの?」
「デモ中に無断で写真を撮られるのは違憲?」

こうした疑問に答える重要な判例が、「京都府学連事件」(最高裁昭和44年12月24日大法廷判決)です。本判例は、憲法13条に基づいて新たな人権として「肖像権的自由」を認めたという点で、司法書士試験でも頻出のテーマです。

今回は、この判例の概要から最高裁の判断、試験での出題ポイントまでをわかりやすく解説していきます。

事件の概要:デモと写真撮影を巡る衝突

本件は、学生Xがデモ行進に参加したことから始まります。このデモは公安委員会の条件付き許可を受けて実施されたもので、警察はその遵守状況を監視していました。

ところが、警察官Aはデモ中に「条件違反がある」として、写真撮影を開始。これに対してXが抗議し、Aに怪我を負わせたことでXは公務執行妨害罪・傷害罪で起訴されました。

この事件で争点となったのは、Xの肖像(容ぼう等)を警察官が無断で撮影したことが、憲法上許されるのかどうかという点です。

憲法13条とは何か?~個人の尊重と新しい人権~

憲法13条は以下のように規定しています。

「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」

この条文は、「個人の尊重」と「幸福追求権」を規定したもので、プライバシーや肖像権といった“新しい人権”の根拠条文とされています。

京都府学連事件では、この憲法13条をもとに「無断で容ぼうを撮影されない自由」が論点となりました。

最高裁の判断:肖像権的自由は憲法13条に含まれる

最高裁はまず、次のように述べています。

「憲法13条は、国民の私生活上の自由を保護しており、その一つとして、承諾なしに容ぼう等をみだりに撮影されない自由が含まれる」

ここで注目したいのは、「肖像権」という明確な言葉は使わず、「みだりに撮影されない自由」という表現にとどめている点です。しかし、実質的には肖像権に相当する内容を憲法13条から導いていることになります。

これにより、憲法13条が従来の自由権に加えて、「自己情報コントロール権」や「プライバシー権」など、新しい人権を保障する土台であることが明らかにされました。

ただし絶対的な権利ではない:公共の福祉との調整

最高裁は一方で、こうも述べています。

「無断で撮影されない自由も、公共の福祉のために相当の制限を受ける」

つまり、肖像権的自由も無制限ではなく、「犯罪捜査の必要性」や「緊急性」がある場合には、令状や本人の同意なしでも撮影が許されるとしました。

その条件は以下の通りです。

無令状での写真撮影が許される要件

  1. 現に犯罪が行われ、または行われた直後であること
  2. 証拠保全の必要性と緊急性があること
  3. 撮影方法が社会通念上相当であること

この三要件を満たすとき、たとえ第三者の容ぼう等が写ってしまっても、憲法13条にも35条(住居等の不可侵)にも違反しないと判断されました。

試験で問われやすいポイント

司法書士試験でこの判例が出題される場合、以下のポイントを押さえておくことが重要です。

  • 憲法13条の「個人の尊重」とは何か?
  • 「みだりに撮影されない自由」が憲法上保護されるか
  • 「肖像権」の定義を明確にしない最高裁の意図
  • 公共の福祉に基づく制約の三要件
  • 憲法13条から導かれる“新しい人権”の他の例(自己情報コントロール権など)

また、「刑事訴訟法218条(令状による写真撮影)」との関連や、プライバシー権と区別して問う形式にも注意が必要です。

現代社会における意義:スマホ社会と肖像権

この判例は、1969年(昭和44年)に言い渡されたものですが、現在のスマホ・SNS時代においても極めて重要な意義を持っています。

街中やイベントでの無断撮影・無断掲載が日常的に行われる現代では、「みだりに撮影されない自由」がより強く意識されるようになっています。

また、防犯カメラ・顔認証・監視社会といった現代の技術に対して、どのように個人のプライバシーや肖像権を守るかという点でも、本判例は基礎となる考え方を提供しています。

よくある質問(FAQ)

Q:肖像権は法律で明文化されているのですか?
A:現時点では明確な法律上の条文は存在せず、主に憲法13条や民法709条(不法行為)を根拠として裁判例で確立されています。

Q:公共の場で写真を撮られた場合、違法ですか?
A:必ずしも違法とは限りませんが、撮影目的や方法、使用方法によっては違法性が認められる可能性があります。

Q:この判例が注目される理由は?
A:憲法13条から新しい人権を導いた初期の判例として重要であり、肖像権に関する法的判断のベースとなっているためです。

まとめ

京都府学連事件は、「肖像権的自由」という新たな人権の登場を告げる歴史的な判例です。最高裁は、憲法13条を根拠に「無断で容ぼうを撮影されない自由」を認めつつも、犯罪捜査など公共の福祉のために合理的な制限が可能であることを示しました。

このような憲法と個人の自由に関するバランスの取り方は、今後の社会や技術の進展とともに、ますます重要になっていきます。

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