配偶者居住権は、令和2年の民法改正により新設された制度です。相続法の改正の目玉の一つであり、司法書士試験でも頻出の重要論点となっています。この記事では、配偶者居住権の基本から実務的なポイント、試験対策のコツまで、初学者にもわかりやすく解説します。
配偶者居住権の基本とは
配偶者居住権の定義
配偶者居住権とは、被相続人(亡くなった人)の配偶者が、相続開始時にその建物に住んでいた場合、終身または一定期間、無償でその建物に住み続けられる権利です。
民法1028条に規定され、目的は配偶者の生活基盤の確保です。
制度の背景
これまでの相続では、配偶者が長年暮らしていた自宅が相続分の計算に組み込まれ、場合によっては売却を迫られることもありました。これを防ぐために導入されたのが配偶者居住権です。
たとえば、夫が亡くなり、自宅を妻と子が相続するケースでは、子が単独で自宅を相続してしまうと、妻は立ち退きを迫られるリスクがありました。配偶者居住権は、こうした問題を解消します。
配偶者居住権の特徴
権利の成立要件
配偶者居住権は以下の要件で成立します。
- 相続開始の時に配偶者が居住していたこと
- 配偶者居住権の設定を遺産分割または遺贈・遺産分割協議で決めたこと
権利の内容
- 終身または一定期間の使用・収益権
- 第三者に対抗できる登記が可能
登記を行うことで第三者に対抗でき、賃貸などの不安も減少します。
配偶者短期居住権との違い
配偶者短期居住権は、遺産分割が終わるまでの間に無償で住める権利で、遺産分割の話し合いが長引く場合に備えた制度です。混同しないよう注意が必要です。
配偶者居住権の実務上のポイント
司法書士として重要なのは登記実務です。
- 配偶者居住権の登記申請
登記をすることで、第三者(例:家を買った人、金融機関など)に対して権利を主張できます。 - 評価額の算定
遺産分割では配偶者居住権の評価額を算定し、遺産全体に対する相続分と調整します。これを理解しておかないと、相続人間のトラブルに発展しかねません。 - 配偶者居住権の消滅
期間満了・配偶者の死亡・合意解除などで消滅します。消滅登記の実務も問われる場合があります。
司法書士試験で問われる論点と対策
頻出論点
- 配偶者居住権の成立要件
- 短期居住権との比較
- 登記の要否と第三者対抗要件
- 評価額の計算方法
- 消滅事由と手続
試験対策のコツ
- 条文を理解する
民法1028条~1036条を中心に、条文を繰り返し読み、制度趣旨を把握しましょう。 - 判例・通達を確認する
実務でも重要ですが、試験でも重要な判例・通達はしっかり押さえましょう。 - 図を書いて整理する
誰が何を相続するのか、図解すると記憶に定着します。 - 過去問を繰り返す
出題パターンを覚えるために、直近5年分の過去問はマストです。
配偶者居住権の事例・体験談
実務ではこんな相談があります。
事例1:夫死亡後の妻の不安
「夫が亡くなり、家は長男名義にしたい。でも私は住み続けたい…」
→ 配偶者居住権を設定し、長男の名義に変更しつつ、妻は安心して住み続けられるように調整。
事例2:兄弟間の争いを回避
「実家の土地建物を相続したい兄と、住み続けたい母が衝突」
→ 配偶者居住権を活用して兄は他の財産を、母は住まいを確保。
こうした事例は相談現場で多く、司法書士としての役割は重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 配偶者居住権は勝手に発生しますか?
いいえ。遺産分割協議や遺言書で決める必要があります。
Q2. 登記しないとどうなりますか?
第三者に対抗できません。必ず登記しましょう。
Q3. 配偶者居住権は売れますか?
基本的に譲渡はできません。住むための権利です。
Q4. 配偶者短期居住権との違いは?
短期居住権は遺産分割が終わるまでの間、居住できる権利で、原則として登記不要です。
まとめ:配偶者居住権を攻略して合格に近づこう
配偶者居住権は、配偶者の生活を守る重要な権利です。司法書士試験では、基本概念から実務知識、登記・評価額まで幅広く問われるため、体系的な理解が必須です。
試験対策としては、以下を意識しましょう。
- 条文の理解
- 短期居住権との違い
- 過去問の繰り返し
また、実務では登記や相続人間の調整が重要になるため、理論だけでなく実践的な視点も磨いておくと、合格後の強みになります。
司法書士を目指す皆さんは、配偶者居住権をきっちり攻略して、試験突破と実務家デビューを目指してください!