不動産登記法 民法

相続した不動産を売る前に知っておくべき手続きと注意点|司法書士が徹底解説

相続した不動産を売るとき、まず何をすべき?

相続によって取得した不動産を売却したい――このような相談は、司法書士の現場で非常に多く寄せられます。しかし、遺産として受け継いだ不動産をすぐに売ることはできません。いくつかの手続きと法的要件をクリアする必要があります。

まず重要なのは「不動産の名義を相続人に変更すること」です。これを「相続登記」と呼びます。

相続不動産を売却するまでの流れ

相続した不動産を売却するには、次のようなステップを踏む必要があります。

① 被相続人の死亡届出と戸籍の取得

死亡届の提出後、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集し、相続人を確定します。

② 遺言書の有無を確認

公正証書遺言や自筆証書遺言があれば内容を精査し、それに従って相続を進めます。

③ 遺産分割協議を実施(相続人が複数の場合)

不動産を誰が取得するのかを明確にし、全相続人の署名・押印で合意内容を文書化します。

④ 相続登記の申請

取得者の名義に変更するため、法務局に対して「相続による所有権移転登記」を行います。

⑤ 不動産売却の準備と売買契約

不動産会社に依頼し、査定・売却活動を開始。買主が決まり次第、売買契約を締結します。

相続登記は義務化されています

令和6年4月から「相続登記の義務化」が施行され、正当な理由がなく3年以内に登記をしないと**過料(10万円以下)**が科される可能性があります(不動産登記法第76条の2)。

司法書士試験でも出題可能性が高いため、以下の要件は必ず確認しておきましょう。

  • 相続開始から3年以内に申請義務あり
  • 正当な理由がある場合は猶予
  • 登記義務者が複数いる場合でも個別に責任を問われる

遺産分割が未了でも売れる?共同名義の問題点

遺産分割協議が整っていない不動産は、「法定相続分による共有状態」となります。たとえば相続人が3人いる場合、不動産は3人の共有名義で法務局に登録されます。

この状態で売却するには、共有者全員の合意と署名・押印が必要です。一人でも反対すれば売却は不可能。実務でも「相続人の一人が行方不明」「連絡が取れない」といったケースは珍しくありません。

このような場合には、家庭裁判所での「遺産分割調停」や「不在者財産管理人の選任」が必要になることもあります。

不動産売却にかかる税金と注意点

相続不動産を売却すると、以下のような税金が発生します。

① 譲渡所得税(所得税+住民税)

不動産の売却益に対して課税されます。取得費が不明な場合、5%しか控除されないこともあるため注意。

② 登録免許税(相続登記・売却登記時)

相続登記の際には0.4%、売却時には2%程度の税がかかります。

③ 印紙税(売買契約書)

不動産の売買価格に応じて課税されます。

④ 相続税(相続時点での評価額による)

不動産の評価額が一定額を超えると、相続税の申告・納付が必要です。

※相続開始から3年以内に売却した場合、**「取得費加算の特例」**が使える可能性があるため、税理士や司法書士との相談が重要です。

司法書士が支援できるポイント

相続不動産の売却には多くの法的手続きが絡みます。司法書士がサポートできるのは以下のような部分です。

  • 相続人調査(戸籍収集・法定相続情報一覧図作成)
  • 相続登記手続き
  • 遺産分割協議書の作成
  • 登記識別情報の取得と確認
  • 売買登記・名義変更

法務局や税務署、不動産会社など複数の機関とやり取りが発生するため、専門家に相談するのがベストです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 遺言がある場合でも相続登記は必要?
→ はい。遺言書に基づく所有権移転登記が必要です。遺言執行者が指定されていれば、その人が手続きを行います。

Q2. 不動産を相続しても住む予定がない場合、どうすべき?
→ 空き家のまま放置すると、管理責任や固定資産税がかかります。早めに売却や賃貸活用を検討しましょう。

Q3. 相続人が外国に住んでいるときは?
→ 在外証明書や印鑑証明に代わる宣誓供述書などが必要になります。現地の日本領事館で取得可能です。

司法書士試験で問われやすい論点まとめ

試験対策としては、以下の点が問われやすくなっています。

  • 不動産登記法における相続登記の手続きと添付書類
  • 民法における遺産分割協議の効力
  • 所有権移転登記の登記原因の表記方法
  • 共有物の処分に関する民法第251条
  • 不在者財産管理制度・失踪宣告との関連性

特に記述式では、「相続人が複数いるケースでの登記の記載」や「遺産分割協議書に基づく登記記載の方法」がよく出題される傾向があります。

体験談:相続不動産の売却に失敗しないために

「父の死後、実家を相続しましたが、兄弟で話がまとまらず1年以上放置。結局、空き家になって固定資産税ばかり払う羽目に。司法書士に相談して登記と分割協議をスムーズに終え、やっと売却できました。」
(50代女性/東京都)

このような声は非常に多く、「早めの相談」が成功のカギとなります。

まとめ:相続不動産を売却するなら、まず司法書士に相談を!

相続した不動産を売るためには、登記手続き・遺産分割・税務対応と、複雑な法的処理が必要です。感情のもつれや知識不足がトラブルの火種になりやすいため、専門家のサポートは不可欠です。

司法書士は、相続登記の専門家として最前線で支援が可能です。売却を検討している段階でも、まずは相談してみましょう。それが最も安全で確実な第一歩です。

【司法書士試験対策】特定遺贈の登記と配分方法の違いを完全攻略

-不動産登記法, 民法