民法

物権的請求権と債権的請求権の違いとは?司法書士試験で必須の使い分けを徹底解説!

民法の勉強を進めると、必ず登場するのが「物権的請求権」と「債権的請求権」。似たような名前のため混同されがちですが、これらは性質も効力も使い方もまったく異なります。特に、司法書士試験においては、どちらの請求権を使うべきかを的確に判断できることが求められます。

本記事では、両者の違いを根本から理解し、試験で問われるパターンや具体的な使い分け方、さらには判例ベースの実例まで、深掘りして解説します。

そもそも「請求権」とはなにか?

請求権とは、相手方に対してある行為を要求することができる権利です。法的に裏付けられた「請求」であり、単なるお願いとは異なります。

請求権には大きく分けて以下の2種類があります。

  • 物権的請求権:物権の保護を目的として発生する
  • 債権的請求権:債権(契約関係など)に基づいて発生する

これらの違いを明確にすることが、試験では得点力に直結します。

物権的請求権とは?【物権を守るための請求】

物権的請求権とは、自己の物権が妨害された場合や侵害された場合に、その排除や回復を求めるために使う請求権です。

たとえば、所有権者が自分の物を他人に無断で占有されたとき、その物の返還を求めることができます。これが典型的な物権的請求権です。

主な種類

  1. 返還請求権:不法に占有された物を返してもらう請求
     例:Aの自転車をBが無断で持ち去った → Aは返還請求できる
  2. 妨害排除請求権:現在進行形の妨害行為をやめさせる請求
     例:隣地の住人が越境して塀を建てた → 撤去を請求できる
  3. 妨害予防請求権:将来の妨害を未然に防ぐ請求
     例:隣の住人が敷地内に物を積み上げていて、崩れてくる危険がある → 防止を請求

特徴

  • 権利の性質:絶対的権利(誰に対しても主張できる)
  • 請求の対象:現実に存在する物に対する支配
  • 公示要件:登記や引渡しなどを備えていれば第三者にも対抗可能
  • 相手方が誰であろうと、「自分のものだから返して」と言える強力な権利

債権的請求権とは?【契約などの義務に基づく請求】

債権的請求権は、契約関係などに基づき、特定の人に対して何かをしてもらうことを請求する権利です。これは「相手に対する義務履行の要求」であり、相手方が特定されている点が特徴です。

例:売買契約の場面

AがBにパソコンを売った。Bは代金を支払わない。

→ AはBに「代金を払ってください」と請求できる。

これは「債権的請求権」であり、契約(売買)に基づいて生じています。

特徴

  • 権利の性質:相対的権利(特定の人にしか主張できない)
  • 請求の対象:債務者による一定の行為(支払い、引渡しなど)
  • 公示性:原則としてなし(登記等は不要だが、対抗力が弱い)

物権的請求権と債権的請求権の違いとは?

この二つの請求権の違いは、「どんな権利に基づいて請求しているのか」にあります。

物権的請求権は、自らが所有者などの物権者であることを前提に、モノそのものを支配回復・防衛するための請求です。相手が誰であれ主張できます。

一方、債権的請求権は、契約などによって発生した義務に基づき、相手方に行為を求める請求です。相手が特定されていないと主張できません。

この違いは、試験問題において「どちらの請求権を行使すべきか?」という場面で頻繁に問われます。

実務でも重要!典型的な使い分け事例

事例1:賃借人が家賃を払わない

AがBにマンションを貸していたが、Bが家賃を滞納した。この場合、AがBに対して「家賃を払って」と請求するのは、債権的請求権に基づきます。契約に基づく請求だからです。

ただし、Bが契約終了後も出ていかない場合、Aは物権的請求権(所有権に基づく返還請求)を行使して「部屋を明け渡して」と請求できます。

つまり、契約関係がある間は債権的請求権、契約が終わった後は物権的請求権を使う場面に移行します。

試験でよくある落とし穴と対策

1. 請求権の「相手」が誰なのかを見極める

  • 特定の契約相手→債権的請求権
  • 不法占拠者など、契約関係がない者→物権的請求権

問題文では、当事者間に契約があるかどうかを必ず確認しましょう。

2. 「請求内容」が何を目的としているかを読む

  • モノの返還や侵害の排除→物権的請求権
  • 代金支払や行為の履行→債権的請求権

つまり、求めているのが「モノ」か「行為」かによって判断します。

3. 「契約が終了した後」の場面は要注意

契約が終了したにもかかわらず占有を続けている場合は、債権的請求ではなく、物権的請求(所有権に基づく返還請求)が正解になるケースがあります。ここは択一・記述ともに問われやすいポイントです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 債権的請求権と物権的請求権を同時に主張できますか?

A. 場合によっては併用可能です。ただし、どちらの根拠を強調するかで請求の手段や対象が異なるため、使い分けが必要です。

Q2. どちらが効力が強いですか?

A. 原則として、物権的請求権の方が効力は強いです。なぜなら物権は絶対的権利であり、対抗力があるからです。

Q3. 不法占拠された土地に戻してほしいときは?

A. 所有権に基づく返還請求=物権的請求権を使います。

まとめ:請求権の性質を見抜ければ、試験も実務も怖くない!

物権的請求権と債権的請求権の使い分けは、民法・不動産登記法・会社法など、あらゆる科目に横断的に関わる重要テーマです。

まずは、それぞれの請求権が「何を根拠にしているのか」を見極め、次に「誰に」「何を」請求しているのかを丁寧に判断しましょう。

この視点を持てば、択一式でも記述式でも迷わず答えを導けるようになります。

次回は「不動産登記と請求権の関係」についてさらに踏み込んだ解説をお届けします。お楽しみに!

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