民法178条は、不動産の物権変動に関する対抗要件としての登記制度を定めた極めて重要な条文です。この条文の中でとりわけ試験で頻出するのが、「第三者」の意味とその範囲です。
「どこまでが第三者なのか?」「善意か悪意かで扱いは変わるのか?」「登記がなければ絶対に勝てないのか?」といった疑問は、司法書士試験においても出題パターンが多様です。
この記事では、民法178条の趣旨と条文の構造、そして「第三者」の具体的な範囲と判例をもとに、合格に直結する試験対策を徹底解説します。
民法178条とは?まずは条文の確認から
まずは条文を正確に確認しておきましょう。
民法第178条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
不動産に関する物権の得喪及び変更は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
この条文は、不動産について物権(所有権・地上権・抵当権など)の移転や設定があった場合、登記がなければ他人に主張(対抗)できないというルールを定めています。
したがって、売買や贈与で不動産を取得しても、登記をしなければ第三者に対抗できず、権利を奪われる可能性があるということになります。
「第三者」とは誰か?|条文理解の核心部分
司法書士試験において最も問われるのが、ここです。民法178条における「第三者」とは一体どのような人を指すのでしょうか?
結論:登記を欠く当事者よりも優先的に保護されるべき法律上の利害関係人
つまり、対抗関係に立つ者です。例えば以下のような者が「第三者」に該当します。
【第三者に該当する典型例】
- 同じ不動産について、先に登記を得た二重譲受人
- 同一不動産に抵当権設定を受けた抵当権者
- 差押え登記をした債権者
- 時効取得者
- 所有権を取得した相続人
注意!「第三者に該当しない者」も存在する
逆に、以下のような者は「第三者」に該当しないとされ、登記がなくても対抗できます。
【第三者に該当しない例】
- 単なる背信的悪意者(信義則違反)
- 所有権取得者の承継人
- 物権変動に関する当事者間の関係者
- 判決により所有権を取得した者(対抗要件の要否は別論点)
判例で理解する「第三者」の範囲
ここからは重要な判例を通じて、より実践的に理解を深めましょう。
【判例①】最判 昭和42年5月2日(背信的悪意者排除)
登記を具備しない所有者から不動産を譲り受けた者が、背信的悪意者である場合には、民法178条の「第三者」に該当しない。
この判例では、「後から登記を得た者」がいたとしても、信義則に反するような悪意がある場合は、登記の優劣で保護されないという例外が認められました。
【判例②】最判 平成3年1月24日(債権者の差押え)
不動産を登記なしで取得した者がいる場合、その後に差押登記をした債権者は「第三者」に該当し、登記の欠缺を主張できる。
このように、債権者は登記を得ていれば、所有者に対抗できる地位を得られます。
実務・試験に出る具体例で確認
ケース①:二重譲渡
Aが不動産をBに売却し、登記をしないうちにCにも売却。Cが先に登記した場合:
- Cが善意・無過失で登記取得 → Cが保護される(C=第三者)
- Cが悪意であっても、背信的悪意でなければ保護される
ケース②:差押え債権者
Bが登記なしでAから不動産を買ったが、Aに対してCが債権を持ち、差押登記をした場合:
- Cは「第三者」に該当 → 登記を欠くBより優先される可能性大
よくある質問(FAQ)
Q. 「第三者」は善意でなければならない?
→ 原則として善意である必要はありません。ただし、信義則に反するような背信的悪意者は除かれます。
Q. 借地権・地上権なども178条の対象?
→ はい、不動産に関する物権の変動すべてが対象です。ただし、借家契約などの債権的権利は対象外です。
Q. 債権者はすべて「第三者」になる?
→ 登記を得たうえで差押えや担保を設定すれば、「第三者」として保護される可能性があります。
司法書士試験対策のコツ
司法書士試験では、次のようなパターンで出題されます。
① 定義理解型問題
- 「民法178条の第三者に該当しないのはどれか」など、定義に即した選択肢問題が定番です。
② 判例応用型問題
- 判例の知識がなければ選べない問題が多数出ます。「背信的悪意者」「差押債権者」など、キーワードは覚えておきましょう。
③ 記述式での登記要否判断
- 所有権を取得した者が対抗力を持つかを、登記の有無と「第三者性」で判断させる形式の記述問題が頻出。
まとめ:登記の有無+「第三者性」の判断が勝負を分ける!
民法178条の「第三者」概念は、一見単純に思えても、登記制度の根幹をなす重要な判断基準です。
- 登記の欠缺 → 対抗できるか否かは「第三者」であるかによって決まる
- 背信的悪意者は排除される
- 試験では判例とセットで理解することが重要
司法書士試験においても、「登記の有無と第三者性の組み合わせ」による判断が頻出。理解不足は致命的になりかねません。
合格に直結する知識として、第三者の定義と該当性をしっかり押さえておきましょう!
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