不動産登記法

数次相続があった場合の所有権保存登記とは?司法書士試験対策で押さえておくべき実務知識

司法書士試験で問われる不動産登記法の中でも、相続登記は出題頻度が高い分野です。特に「数次相続があった場合の所有権保存登記」は、試験でも実務でも理解しておくべき重要テーマです。この記事では、数次相続の基礎から、保存登記の手続き、必要書類、試験対策までを丁寧に解説します。

数次相続とは?

数次相続(すうじそうぞく)とは、ある相続が終わらないうちに、相続人の一人が死亡し、その相続人にも相続が発生することをいいます。

具体例

  • 祖父Aが死亡。相続人は父Bと叔母C。
  • 登記未了のまま、父Bが死亡。Bの相続人は子Cと配偶者D。

このように、相続が連続して発生する状態が「数次相続」です。

所有権保存登記とは?

所有権保存登記とは、まだ所有者の登記がなされていない不動産について、最初の所有者として登記をすることをいいます。通常は、新築建物や相続で取得した登記未了の不動産に対して行います。

数次相続がある場合の所有権保存登記の基本ルール

数次相続が発生している場合でも、最終的に不動産を相続した者が、単独で所有権保存登記を申請することが可能です。ただし、そのためには、数次にわたる相続の経過をすべて証明する必要があります。

保存登記の申請者

最終的な相続人が申請者となります。途中の相続人が登記をしていない場合でも、その相続人の相続人が保存登記を行えます。

登記原因

登記原因は「相続」となります。最初の被相続人の死亡に始まり、すべての相続関係を証明する必要があります。

数次相続の所有権保存登記で必要な書類

以下の書類を準備することが重要です:

  • 被相続人(初代)から最終的な相続人までの戸籍一式
  • 相続関係説明図(または法定相続情報一覧図)
  • 遺産分割協議書(任意だが、単独相続を主張する場合は必須)
  • 登記申請書
  • 登記識別情報(今回は不要)
  • 住民票や印鑑証明書(相続人に関するもの)
  • 登録免許税:固定資産税評価額の0.4%

登記手続きの流れ(実務的視点)

  1. 不動産の登記簿を確認し、所有権未登記であることを確認
  2. 被相続人と相続人の戸籍一式を取得
  3. 相続関係説明図を作成
  4. 必要に応じて遺産分割協議書を作成
  5. 所有権保存登記の申請書を作成し、法務局へ提出

実際の事例

事例:祖父の名義のまま30年経過

東京都内の住宅地にある木造住宅。登記簿上の所有者は30年前に死亡した祖父。相続登記をしていなかったため、父の死後に最終的に孫が相続人となり、数次相続による所有権保存登記が必要になった。

このケースでは、戸籍の取得と相続関係図の作成に1ヶ月ほどかかりましたが、無事に登記が完了。売却も可能になり、空き家問題の解決にもつながりました。

よくある質問(FAQ)

Q:相続人が複数いて合意が取れないときはどうする?

A:全員の合意が必要な遺産分割協議ができない場合は、法定相続分による共有登記を先に行いましょう。

Q:未成年の相続人がいるときは?

A:法定代理人(通常は親権者)が代わって協議・登記手続きを行います。利害が対立する場合は特別代理人の選任が必要です。

Q:登記せずに放置していると問題になる?

A:相続登記は2024年4月から**義務化され、3年以内に登記しないと過料の対象(最大10万円)**になります。放置はリスクです。

司法書士試験での出題ポイント

このテーマは、司法書士試験において以下のように出題されることがあります:

  • 保存登記の申請人が誰か
  • 数次相続の場合の添付書類の正確な理解
  • 登記原因証明情報の記載方法
  • 登録免許税の計算式

模擬問題例

問題:所有権保存登記の申請人は、最初の被相続人から数次相続を経た最終相続人のみで行えるか?

→ 答え:できる。必要な一連の戸籍と関係説明図等を添付すればよい。

試験対策のコツ

  • 相続登記と保存登記の違いを明確に理解する
  • 登記の申請人になれる者の範囲を整理しておく
  • 戸籍収集や関係図の作成方法をイメージできるようにしておく
  • 実際の登記申請書の記載内容にも触れておくと得点源になる

まとめ

数次相続が発生した場合でも、最終的な相続人が所有権保存登記を単独で申請することが可能です。ただし、登記原因や申請人の適格性、添付書類の正確な理解が求められます。

実務と試験の両面から対策を進め、試験本番で確実に点を取れるようにしましょう。「相続登記の義務化」も視野に入れた実務的視点を持つことが、今後の司法書士には求められています。

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