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中間省略の実態とは?今も使われている手法と合法的な構成を司法書士試験目線で徹底解説

不動産の売買や転売が複数当事者を経由する場合に話題となる「中間省略」。かつては実務で頻繁に利用されていたこの登記手法は、現在の登記法上原則として禁止されています。しかし、登記コストの節約や取引の迅速化という実務上のニーズから、合法的な形で“中間省略的な処理”が行われているのが現実です。

本記事では、司法書士試験を意識しながら、中間省略登記の定義、禁止の理由、そして現在の実務でどのような形で活用されているのかについて、図表風の構成も交えて分かりやすく解説します。

中間省略登記とは何か?仕組みを図解で理解

まず、中間省略登記の基本構造を図表風に整理します。

▼ 実体の売買関係(通常の流れ)
A(売主)→ B(中間者)→ C(最終取得者)

▼ 通常の登記の流れ
A → B(所有権移転登記)
B → C(所有権移転登記)

▼ 中間省略登記の流れ(問題とされる構成)
A → C(Bを飛ばして登記)
※ 実体上はBが関与しているのに、登記には現れない

このように、中間者Bを登記手続から「省略」することにより、登録免許税や司法書士報酬が一回分で済むなどのメリットがあります。

なぜ中間省略登記は原則として禁止されているのか?

中間省略登記が登記実務で原則禁止されているのは、以下の理由によります。

【中間省略が登記制度に与える悪影響】

問題点内容
登記の真正性を損なう実体関係(A→B→C)と登記内容(A→C)が不一致になる
登記記録の連続性を破壊所有権移転の履歴が途切れ、第三者が誤解するリスクが生じる
登記の信頼性を低下登記簿を見ても誰がいつ取得したかが分かりにくくなる

このように、中間省略登記は登記の公示機能と真正な登記名義人制度に反するとして、不動産登記法第25条によって原則として否定されています。

実務で使われる「中間省略的構成」の合法的な手法とは?

現代の不動産取引では、登記法違反にならないように工夫しながら、実質的に中間省略と同じ効果を得る手法が複数あります。代表的な3パターンを見ていきましょう。

パターン①:本人名義売買(合法構成)

CがBの依頼を受けて、Aから直接不動産を購入し、A→Cの登記を実行するという構成です。実体上はBが関与していますが、登記上は省略されます。

▼構成イメージ

  • 実体:A → B → C
  • 登記:A → C(CがBの代理人として登記)

▼合法とされる理由

  • CがBの代理人として売買契約・登記申請を行う
  • 実体と登記の整合性がある
  • 登記原因証明情報に整合的な内容が記載されている

パターン②:停止条件付き契約の活用

A→B間で「BがCと売買契約を締結したときに効力が生じる」停止条件付き契約を結び、B→Cが先に確定した後にA→Cの登記を行います。

▼構成イメージ

  • A → B(停止条件付き契約)
  • B → C(通常の売買)
  • A → C(条件成就後に所有権移転登記)

▼合法とされる理由

  • 条件成就により実体的にA→Cへの移転が可能となる
  • 各契約が独立かつ適法である限り登記の整合性が保たれる

パターン③:登記原因証明情報の工夫

司法書士が関与して、A→Cへの登記申請にあたって、登記原因証明情報の中でBの存在と合意を明示し、法的整合性を確保するケース。

▼構成イメージ

  • 書面上でBが「Cに登記を移すことに同意している」旨を記載
  • A・B・Cの三者が登記内容に合意している

▼合法とされる理由

  • 虚偽登記ではなく、三者間の同意が明確
  • 登記官も実体の整合性を確認しやすい

実際の判例・司法判断はどうか?

最高裁の立場

中間省略登記を明確に「合法」と認めた判例は存在しません。しかし、「真正な権利者による本人名義売買などの構成が合法である」ことを前提にした判例は多数あり、実体と登記の一致があれば許容されるというのが実務的な帰結です。

司法書士試験ではどう出題されるか?

▼頻出テーマ例:

  • 不動産登記法第25条の趣旨と適用範囲
  • 登記原因とその証明資料の妥当性
  • 「中間者を省略した登記は可能か?」という記述問題
  • 実体法と登記法の整合性に基づいた判断

▼試験対策ポイント:

  • 中間省略=原則違法、ただし構成次第で合法となる
  • 「本人名義売買」や「条件付き契約」などの合法パターンを明確に区別
  • 登記原因証明情報が整合的かどうかの見極め力が重要

よくある質問(FAQ)

Q1. 中間省略登記を行うと違法になりますか?
→ 原則として不動産登記法25条により違法とされます。ただし、構成次第で合法的に登記することは可能です。

Q2. 中間者が税務上の手続を済ませていないときにA→Cで登記できますか?
→ 原則として不可。税務処理・契約関係が不明確なままでは、登記官が受理しない可能性があります。

Q3. 登記官は中間省略をどのように見抜きますか?
→ 登記原因証明情報の内容、代理権の有無、関係当事者の署名押印などを確認します。

まとめ|「形式」と「実体」の整合性が合法中間省略のカギ

中間省略登記は、形式的には禁止されていても、実体と整合する構成を取ることで合法的に実現されているのが現代実務の実態です。

司法書士試験では、「なぜ違法なのか?」「どのようにすれば合法か?」というロジックの構築が問われます。判例・実務・登記法の三方向からの視点を持ち、柔軟に構成できる力が合格への近道です。

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