民法

【司法書士試験対策】特定遺贈の登記と配分方法の違いを完全攻略

相続が発生したときに注目すべきポイントのひとつが「遺贈」です。中でも「特定遺贈」は、民法の条文上も司法書士試験上もよく問われる重要な制度ですが、相続人との関係や配分方法について混乱しやすい論点でもあります。

この記事では、特定遺贈の基礎知識から、遺産分割との関係・配分の方法・実務上の注意点・試験対策の視点まで、具体的な事例とともに詳しく解説します。

遺贈とは?包括遺贈と特定遺贈の違いを理解しよう

まず、遺贈とは、遺言によって財産を無償で譲渡することをいいます。遺贈には2種類あります。

● 包括遺贈

  • 相続財産の全部または割合的部分を譲る
  • 例:「全財産の3分の1をAに与える」
  • 包括遺贈受遺者は相続人と同じく、相続債務の負担をする

● 特定遺贈

  • 財産のうち特定の物を譲る
  • 例:「甲土地をBに遺贈する」
  • 債務は原則負担しない

司法書士試験では、**「包括遺贈か特定遺贈かを判別し、そこから手続の流れを導く」**という形で問われることが多いため、違いを正確に理解することが重要です。

特定遺贈の配分方法|誰にどう配られるのか?

特定遺贈では、遺言で指定された特定の財産が、指定された受遺者に移転されます。では、その配分方法はどう決まるのでしょうか?

【原則】遺言に従ってそのまま遺贈される

  • 遺言により、対象財産が特定されていれば、そのままの形で受遺者に帰属します。
  • 遺贈は、遺産分割を経ることなく確定的に権利が移転します。

例:「長女に甲土地、次女に乙土地を遺贈する」→ それぞれに自動的に帰属。

【注意点①】相続人の同意は不要

特定遺贈は、包括遺贈と異なり、受遺者が相続人であるか否かにかかわらず、相続人の同意なしに登記が可能です(ただし、登記申請の際は「登記原因証明情報」が必要)。

【注意点②】相続税評価額と一致しない場合

遺贈された不動産の価格が極端に高い場合、他の法定相続人から遺留分侵害額請求がされることがあります。その場合、配分が調整される可能性もあります。

特定遺贈と遺産分割との違い

ここで整理しておくべきなのが、「遺産分割による配分」と「特定遺贈による配分」の違いです。

区分特定遺贈遺産分割
配分方法遺言に基づいて直接配分相続人間で協議または審判により決定
所有権移転時期原則として相続開始時に発生分割が確定するまで共有状態
登記に必要な書類遺言書+登記原因証明情報遺産分割協議書+相続関係説明図等

司法書士試験では、登記に必要な書類の判断が記述問題で問われることもあるため、実務的な知識も重要です。

【事例で理解】特定遺贈の配分方法

ケース1:特定不動産の遺贈

被相続人Xが、遺言で「長男Aに自宅土地建物(甲不動産)を遺贈する」とした場合:

  • 長男Aは、他の相続人の同意なく甲不動産の所有権を取得
  • 相続登記には、遺言書の写しと登記原因証明情報が必要
  • 他の相続人が遺留分を侵害されていれば、遺留分侵害額請求の可能性

ケース2:預貯金の特定遺贈

Xが「Y銀行の口座を次男Bに遺贈する」とした場合:

  • 預貯金も特定遺贈の対象となる
  • 金融機関では**相続手続と同等の確認資料(遺言書+戸籍謄本等)**が必要

特定遺贈と相続登記の関係

2024年(令和6年)4月1日以降、**相続登記義務化(不動産登記法改正)**がスタートしましたが、特定遺贈の場合は少し特殊です。

● 特定遺贈は「相続登記」ではない

  • 遺贈による所有権移転登記は、**「登記原因:遺贈」**となる
  • 相続人でなくても受遺者は単独で登記申請できる
  • 相続登記の義務化対象とはされないが、速やかな登記が望まれる

試験対策のコツ|司法書士試験での出題傾向

特定遺贈に関する問題は、以下のように出題される傾向があります。

● 択一式問題

  • 「特定遺贈による不動産の所有権移転には、相続人全員の同意が必要である」→ ×(不要)
  • 「包括遺贈と異なり、特定遺贈では債務を承継しない」→ 〇

● 記述式問題

  • 「Aに甲不動産を特定遺贈するという遺言があった。A名義への登記に必要な書類を記せ」
     → 正答:遺言書(自筆証書または公正証書)、登記原因証明情報、相続人の印鑑証明書(必要な場合)

● 計算問題

  • 遺留分との関係で、遺贈された財産の評価額が影響を与えることも。相続税対策や分配割合も出題される可能性あり。

よくある質問(FAQ)

Q. 特定遺贈でも相続人の同意は必要ですか?

→ 不要です。遺言が有効であれば、単独で登記が可能です。

Q. 特定遺贈された物件に抵当権がある場合はどうなる?

→ 原則として、抵当権も付いたまま遺贈されます(民法第1023条)。

Q. 特定遺贈の放棄はできますか?

→ はい、放棄可能です。放棄した場合、その財産は相続財産に戻り、他の相続人のものになります。

まとめ|特定遺贈の配分方法を正しく理解して司法書士試験を突破!

特定遺贈は、民法上の基本ルールを正しく理解し、遺言との関係性、相続人との権利調整、登記との関係を網羅的に理解することが合格のカギです。

【重要ポイント】

  • 特定遺贈は「特定物を直接渡す」制度
  • 相続分の影響を受けずに権利が確定する
  • 相続登記とは区別され、登記義務化の対象外
  • 実務・試験ともに、登記手続の知識が必須

特定遺贈は一見シンプルな制度に見えて、登記や相続税、遺留分と絡むことで複雑化します。しっかり理解を深め、合格へとつなげていきましょう!

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